悼む人

作者 天童荒太さんが、本書を書くに至った発端は、2001年のアメリカ同時多発テロ事件。
不条理な死に無力感をおぼえ、死者を悼んで旅する人の着想が生まれたということです。実際、三年にわたり亡くなった人を悼む旅をされました。着想より完成まで7年。

事故現場、殺人現場を訪れ、亡くなった人が生前「誰に愛され、誰を愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか」・・・ そのことを覚えておくという行為を巡礼のように続ける坂築静人(さかつきしずと)。
母を捨てたと父を憎む雑誌記者。夫を殺した女。自宅で末期癌療養を行う静人の母とその家族 … 坂築靜人を通し、「生」と「死」に深く向き合っていく人々の姿を複層に描きだします。
重いテーマの作品ですが、読み終えて温もりのある余韻。差し込む一筋の光のようなものを感じ読了。

流星や別れの多き年回り ことは