藤沢周平・中島敦

オーディオブック。読むのも楽しいですが、朗読を聴くのもいいものです。
江守徹さんが読む中島敦、松平定知さんが読む藤沢周平は、幾度なく聴いても飽きることの無い名読。時間が出来た冬の夜、時々、楽しんでいます。
お二人の朗読は、声質心地よく、リズムやテンポを絶妙に操りながら、声のトーンや抑揚をうまく使い分けることで、絶妙に物語に命を吹き込む名読。次第に、物語に引き込まれていきます ( ^^) _U~~

檀林皇后私譜  杉本苑子

檀林皇后とは、嵯峨天皇の皇后であった橋嘉智子のこと。京都嵐電の駅に帷子ノ辻という駅がありますが、「帷子の辻」は、橋嘉智子が風葬されたと伝わる地。嵯峨天皇が当時離宮で大覚寺の大沢池で、菊ガ島に咲く菊を花瓶に挿されたことから始まる生け花の流派が嵯峨御流など、これまで点として知っていたことが線としてつながった書でした。

光仁天皇のころから桓武・平城・嵯峨・淳和・仁明に至るあたりまでがこの小説の舞台となっています。この時代は馴染みが薄かったのですが、本書に触発され、いろいろと調べてみますと、怨霊の跳梁、母子相姦、天変地妖の続発、陰謀や毒殺、政変などなど、波瀾万丈の時代。

平安朝三百年間は、藤原氏の絶頂期。中でも摂関の地位を独占したのは藤原北家。「檀林皇后私譜」に描かれる北家の内麿・冬嗣、南家の三守、武家の百川・緒嗣・ 種継・仲成らを輩出したころは、他族・同族間の排除や蹴落としなど、もっとも藤原家の本性を発揮したピークの時代であったようです。空海や最澄、坂之上田村麻呂、小野篁などが活躍したのもこの時代。
「藤原氏はじつに恐ろしい氏族でして、この門葉の勢力の消長をたどってゆくことで、日本史の本質や問題点の多くを解明できると言っても言いすぎではありません」とは著者杉本苑子の言葉です。

橘嘉智子と橋逸勢を縦軸に描かれた平安朝初期の物語、秋の読書初めの一冊でした。

力石

二月の初旬でしたか、「元四日市大学教授で力石の研究家の高島愼助氏から、同氏が次に出版予定の『力石を詠む(十三)』に、ことはさんの句も」とのメールを句友からいただき私の句でよければと返信したのですが、目出度く刊行の運びとなり、本を送っていただきました。
小浜市矢代の力石のことを詠んだ句なのですが、写真まで掲載していただきうれしい限りです。

季語を食べる  尾崎和夫

俳句をするしないにかかわらず、食べることと飲むことに興味をお持ちの方なら、どなたでも楽しめそうな一冊です。
読み返したい本はいつでも読めるように机の上に置いているのですが、その中の一冊になりました。
著者の尾崎和夫氏は、地震学を専門とする地球科学者。京都大学の総長を務められたあと、現在は静岡県立大学の学長、そして、俳人として氷室俳句会の主宰をされています。
若いころはあちらこちらに出かけられたそうで
「現在の現象を現場で詠む」ことを作句のモットーにして、「季節感を体に持ち込むために料理屋に出かけたことは何回もある。総じて、俳句を詠む人たちの多くは食べることと飲むことに、たとえ高齢になっても熱心である」
「国内、国外を問わず、初めての土地では何はともあれ、その土地のものを食べて飲む。知らない食材と珍しい食べ方については、くわしい人を探して聞く。家族に報告するために自分で調理して紹介する習慣ができて、知識が深まり定着する。・・・中略・・・そこから土地の文化に触れる糸口が得られる」という言葉に至極納得。
虎杖、浅蜊、茄子、秋刀魚、牡蠣、他多数・・・旬の時期に食べたい食材であり、季語にもなっています。
一般の歳時記にある説明とは一味も二味も違い、エッセイ風かつ科学的解説が実に楽しく、紹介されている手順で料ってみようかというページもいくつか。
第一章は食べ物 第二章は、春の水、甘酒、麦酒など飲み物に関する季語について、第三章の「健康と生命維持」、第四章の「稲と米の四季」の章では、地球科学者ならではのお話。
たのしい一冊でした。

やさしさごはん

やさしさごはん  河原希美  KADOKAWA

身体にやさしい野菜料理のレシピ集。野菜一品と自宅にある普段使いの調味料で、手軽につくれる料理のレシピばかり。
レシピに従ってつくってみると、とってもやさしい味の野菜料理が完成。ページをめくりめくり、あれやこれやと作りたくなってきます。
「体は食べたものでつくられる。心は聞いた言葉でつくられる。未来は話した言葉でつくられる」とは、たしか北原照久さんの言葉だったと思うのですが、食というものを考えてみることのできる一冊でもありました。