名馬 風の王

マーゲライト・ヘンリー
講談社 青い鳥文庫

宮本輝の「優駿」は競馬界に題材をとった物語。宮本輝のあとがきに、以下のような一文がありました。
「すぐれたサラブレッドというものが、いかにミステリアスな要素によって造形されているかに心魅かれたのはおとなになってからですが、その萌芽は、思い起こせば小学校五年生のときに、こよなく馬を愛した作家、マーベライト・ヘンリー女史の『名馬・風の王』によって、私の心に住みついていました。この小説は、アラビア馬ゴドルフィンの数奇な運命を、少年少女のために虚実織り交ぜて構築された名作です。もし、私が少年期に、『名馬・風の王』を読んでいなかったら、私の『優駿』が、このように形をなすことはなかったでしょう。」

「優駿」を読んで以来、読んでみたいと思っていたのですが、既に絶版。古書店では、どの店も二万円前後の値がついており、購入を躊躇していました。このあいだ、県立図書館の蔵書にあることがわかり、さっそく借りてきました。

モロッコの牡馬シャム(後にゴドルフィンと名づけられる)と馬屋係の少年アグバは、数奇な運命に導かれ、モロッコからフランス、そしてイギリスへと渡っていきます。牢獄にいれられたり、離れ離れになったりと苦労の日々の中で、互いに支え合うように生きるシャムとアグバの物語。ゴドルフィンとは、「神の夜明け」という意味だそうです。
サラブレッド三代始祖の一頭であるゴドルフィン・アラビアンの血を受け継いだ競走馬は、世界中で、いまもなお走り続けています。

絶版になってしまっているのが残念。子どもたちに読んでほしいと思う一冊です。

日本画家 村上茶山 

若狭町パレア若狭で開催されている村上茶山13回忌記念「村上茶山とゆかりの作家展」に行ってきました。展覧会監修は長谷光城先生。

長谷先生の紹介文に
「作家 水上勉が上中町教育長室で休憩され、掛けられていた茶山の「棕梠の萌芽」を見て、是非に、作品の挿絵をと教育長を通じて依頼されたが、茶山は「自分は百姓仕事の合間に好きなように描いている。何時までにと云われてもとても描けない」と固辞したことが話題にもなった。・・・茶山は水上勉の挿絵を固辞したように、謙虚で自由な生き方を生涯貫き、画集や著書等の資料を残されていない。」
という言葉があり、その生き方に感銘を受けました。

茶山が描いた若狭の風景の色紙を一枚500円でお譲りいただけるとのことで、「小浜市甲ケ崎」の画を一枚、いただいてまいりました。

優駿 宮本 輝

オラシオンの誕生からダービーに出場するまでの三年間、オラシオンに関わる人々の生きざまが語られる。オラシオンとは、スペイン語で「祈り」を意味する。
宮本輝氏ならではの巧みな筋立て。物語後半の、ダービー選の模様はその二分数十秒の戦いを迫真の筆致で描く。
競馬界のことについて、いろいろなことを知りえた一冊でもある。
物語の中でサラブレッドにつてついて、宮本輝は、馬主となる和具平八郎にこう言わせている。
「生き物はみなそれぞれに美しい。だが人為的に作りだされてきた生き物だけがもつ不思議な美しさというものが確かにある。サラブレッドの美しさが、その底に、ある哀しみに似たものをたたえているのは、他のいかなる生き物よりも過酷な人智による淘汰と、その人智だけでは到底計り知ることの出来ない生命との対立によって生み出されて来たからなのだ。」

経済安全保障 北村 滋

スパイ天国と言われ続けた日本、警視庁外事課長時代に扱った事件を例にその実態を紹介。続いて、経済安全保障の概念、具体的な内容についての解説は、とても分かりやすい。

「これまで、日本の行政法には安全保障の観点はなかった。つまり、我が国の基幹インフラに外国からの攻撃があっても、また、それが脆弱性を抱えていても、国がそれを守るための仕組みがなかったということだ。戦後、自ら国を守るという意識を欠いたまま、経済を肥大化させる歩みを続けてきた日本。(世界の状況が混沌とするなか)、経済安全保障が死活的に重要な時代が到来した」と北村氏は述べる。

一読の価値が十二分にある一冊だった。

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