バックギャモン

「麒麟がくる」が終了し、日曜日の愉しみがひとつ減ってしまった二月。
最終回で、光秀が信長を討ったあと正親町天皇(坂東玉三郎)と東庵先生(堺正章)が何かで遊びながら語り合う場面がありました。

よく見ると、学生の頃、遊んだことのあるバックギャモン。この時代からあったのかと調べみたら、このゲームの起源は、古代メソポタミヤ、古代エジプトにさかのぼり、ピラミッドの壁画や王族の副葬品にもあるようです。

バックギャモン

日本に伝わったのは飛鳥時代。盤双六と呼ばれていました。「日本書記」にその記述があり、正倉院宝物殿に聖武天皇が愛用した双六盤が保存されているよし。
徒然草にも「雙六の上手といひし人にその手立てを問ひ侍りしかば、勝たんとうつべからず負じとうつべきなりいづれの手が疾く負ぬべきと案じてその手を使はずして一目なりともおそく負くべき手につくべしといふ」と記されています。

・・・というわけで、京都の「京すごろく」が販売している「バックギャモン」買ってしまいました。賽の目に運を委ねながらも、戦略を練り駆け引きができる知的な対戦ゲーム。面白いですよ。

世界史の極意  佐藤 優 

昨年秋、佐藤 優氏が菊池寛賞を受賞されたと知り、氏の著書を何冊か再読した中の一冊。

本書は「多極化する世界」「民族問題」「宗教紛争」の三章で構成されています。
筆者は、現在の状況を正確に捉え見通すため、世界史をアナロジカルに観ることが必要と説きます。「アナロジカルに歴史を見るとは、いま自分が置かれている状況を、別の時代、別の場所に生じた別の状況との類比にもとづいて理解するということ。アナロジー的思考は、論理では読み解けない、非常に複雑な出来事を前にどう行動するかを考えることに役立つ。」
ここ数年間の国内外の混乱は誰もが知る通りですが、2015年に上梓された本書をあらためて読むと、なるほどと頷くことが多いです。蟻の眼的、刹那的、煽情的な報道が多くなった時代、いい書に再会できたと思います。

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アナロジカルに見た近代史の歩み・・・
  • 資本主義は必然的にグローバル化を伴って、帝国主義に発展した。
  • 1991年のソ連崩壊によって、再び資本主義は加速し、新・帝国主義の時代が訪れた。
  • 帝国主義の時代には、資本主義がグローバル化していくため国内では貧困や格差拡大という現象が現れる。
  • 冨や権力の偏在がもたらす社会不安や精神の空洞化は、社会的な紐帯を解体し、砂粒のような個人の孤立化をもたらす。そこで国家は、ナショナリズムによって人びとの統合を図る。同時に、帝国内の少数民族は、程度の差こそあれ民族自立へと動き出す。
  • 「見える世界」の重視という近代の精神は、旧・帝国主義の時代に戦争という破局をもたらした。
  • 現在の新・帝国主義の時代において、目には見えなくとも確実に存在するものが再浮上してくる。
アナロジカルな視点の必要性・・・
  • 私たちは「見えない世界」へのセンスを磨き、国際社会の水面下で起こっていることを見極めなければならない。
  • 歴史には国家によって、民族によって複数の見方がある。歴史は物語であるという原点に立ち返る必要がある。
  • 立場や見方が異なれば、歴史=見方は異なる。世界には複数の歴史がる。そのことを自覚したうえで、よき物語を紡いで、伝えることが重要である。
  • 戦争を避けるために、私たちはアナロジーを熟知して、歴史を物語る理性を鍛えあげていかなければならない。

野良犬の値段  百田直樹

書き下ろしによる百田氏初のミステリー。読み始めると書を置くことなく最後まで読んでしまう人が多いだろう。読後に得られるのは一抹のカタルシス。「永遠のゼロ」や「海賊と呼ばれた男」を読んだ時のようなぬくもりは残らない。ミステリーの形をとってはいるものの氏が描きたかったのは現代の世相、マスメディア、マスメディアに言葉を切り売りするコメンテーター、マスメディアに翻弄される人々へのアンチテーゼ…なのかもしれぬ。

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寒い国から帰ってきたスパイ  ジョン・ル・カレ

The spy who came in from the cold   John le Carré

昨年12月、ジョン・ル・カレ氏の訃報を知り、氏の傑作「寒い国から帰ってきたスパイ」を数十年ぶりに再読。

大学卒業後、英国外務省職員として西独(当時)の英国大使館に赴任。しばらくの間、MI5(軍情報部第5課)、MI6(SIS 秘密情報部)で働いていたことがあるとも伝えられている。「死者にかかってきた電話」で小説家としてデビュー。

ベルリンの壁が築かれ東西の冷戦が緊張化していた時代。暗躍する組織と情報部員の姿がリアリスティック。それだけに、冷徹な任務の中に描かれる機微な人の情が切ない。複雑で巧妙なプロット、最後までスリリングな物語の面白さは時代が変わっても色褪せることなく読了。

寒い国から帰ってきたスパイ

若狭路 水上勉 著

「私は九歳で若狭を出た。今では東京で暮らす人間の一人だが、瞼の壁に消え去らない若狭を、主観的に書きとめておくことも、あるいは私のつとめなのかもしれないと思って、この文を書く気持ちになったのである。」とあとがきにある。

水上は、本郷村(現 福井県 おおい町)の生まれ。9歳の時、京都に住む伯父の元に送られ、相国寺の塔頭のひとつ瑞俊院の小僧となる。その後の経歴は省略するが、「雁の寺」、「金閣炎上」、「飢餓海峡」、「越前竹人形」等々数多くの作品を残している。

さて、若狭は古刹が多く風光明媚な地。穏やかな風土に恵まれた地域だけれど、「原発銀座」というあまりありがたくない名で呼ばれることもある。本書の発刊は昭和43年。敦賀市白木地区に高速増殖炉「もんじゅ」が建設されることになったのは、その2年後、昭和45年のこと。

本書は、水上の若狭紀行と共に、発刊当時の若狭地方の写真が数多く収められている。モノクロームで撮られた春夏秋冬の景は、随分昔に見た記憶が懐かしい若狭の風景。何回も訪れている所もあれば、一度訪れてからもう数十年もたってしまっている所、まだ一度も訪れたことがない所もあり、本書をたのしんだ。

本書が発刊されてから50年。読後、この書に描かれている若狭の風景と現在の若狭の風景を見比べてみたいという気持ちがふつふつと起こり、暇を見つけては、若狭路をまわっている今日この頃。

若狭路  水上 勉