名馬 風の王

マーゲライト・ヘンリー
講談社 青い鳥文庫

宮本輝の「優駿」は競馬界に題材をとった物語。宮本輝のあとがきに、以下のような一文がありました。
「すぐれたサラブレッドというものが、いかにミステリアスな要素によって造形されているかに心魅かれたのはおとなになってからですが、その萌芽は、思い起こせば小学校五年生のときに、こよなく馬を愛した作家、マーベライト・ヘンリー女史の『名馬・風の王』によって、私の心に住みついていました。この小説は、アラビア馬ゴドルフィンの数奇な運命を、少年少女のために虚実織り交ぜて構築された名作です。もし、私が少年期に、『名馬・風の王』を読んでいなかったら、私の『優駿』が、このように形をなすことはなかったでしょう。」

「優駿」を読んで以来、読んでみたいと思っていたのですが、既に絶版。古書店では、どの店も二万円前後の値がついており、購入を躊躇していました。このあいだ、県立図書館の蔵書にあることがわかり、さっそく借りてきました。

モロッコの牡馬シャム(後にゴドルフィンと名づけられる)と馬屋係の少年アグバは、数奇な運命に導かれ、モロッコからフランス、そしてイギリスへと渡っていきます。牢獄にいれられたり、離れ離れになったりと苦労の日々の中で、互いに支え合うように生きるシャムとアグバの物語。ゴドルフィンとは、「神の夜明け」という意味だそうです。
サラブレッド三代始祖の一頭であるゴドルフィン・アラビアンの血を受け継いだ競走馬は、世界中で、いまもなお走り続けています。

絶版になってしまっているのが残念。子どもたちに読んでほしいと思う一冊です。