石鹸玉人生百景すぐ消ゆる 松山足羽

遠藤若狭男氏から、著書「人生百景-松山足羽世界」をいただいた。俳人 松山足羽の人生と句を追った俳人論である。
足羽は、福井市生まれの俳人…1922年2月1日生まれ、1979年「人」創刊同人、発行所代表、1988年「川」創刊主宰、句集『究むべく』等

読み進めるうちに、松山足羽の残した数々の句とともに、足羽の言葉に感銘を受けた。
「私は私の俳句手帖の見開きに自らの座右の銘を墨書きしている—心と身体を俳句に保つ。己をたしかめて句を成す。まだ言えていないから吐露すべきだ。人生を歩く、人生に座らない。それが人格に現れる。生き方に現れる。」

好きな松山足羽の句を…
一月や徒手空拳の腕二本
個人タクシー出て頭垂れ広島忌
草笛の青の中なり最上川
野鼠のひつこみつかぬ桃の花
秋風や亀を出たがる亀の首
竹人形前かがむほど春の雪
気の遠くなるほど眠り雪景色
竹の春だんだん顔が淋しがる
透析の空とんぼうの空となる
病院の妻へただいま秋の暮
肝心なものをわすれて豆の飯
湯河原へ春の帽子になつてゐる
かなかなのかなに悲しみ込めて鳴く

この書を読むまで、松山足羽のことはほとんど知らなかった。
読後、遠藤若狭男氏が、「俳句史にいつまでも残しておかねばならぬ俳人の一人」と述べられているが、その理由がよく理解できた。いい書に出会えたことに感謝。

「人生百景ー松山足羽の世界」  遠藤若狭男 著  本阿弥書店
第13回 日本詩歌句協会・日本詩歌句随筆大賞 大賞受賞(評論部門)

遠藤若狭男: 「若狭」主催 俳人協会監事 日本文藝家協会会員