小浜市 泊 June, 2019

小浜市 泊(とまり)へ

泊(とまり)は、名勝「蘇洞門」で知られる若狭湾内外海(うちとみ)半島の突端部にある集落。内海であるため、波は静かで穏やか、海の向こうに見える山々が美しい。

水上勉の小説に、ここ泊と小浜の遊里 三丁町を舞台とした「波影」がある。1965年、若尾文子主演で映画化(豊田四郎監督作品)もされている。
「波影」は、昭和初期を時代背景に、貧しい家に生まれた薄幸の女性の一生を描いた物語。主人公 雛千代の次のせりふが印象深い。「セッちゃん、泊の村にうまれた人はな、どこで死なはっても、観音さんのとこへもどってきやはるんや。大阪で死なはっても京で死なはっても、魂になって、生れ在所の泊へもどってきやはるんや。うちのお母ちゃんも、お父ちゃんも、ほてから、爺ちゃんも婆ちゃんも、みんな、泊の観音堂へまいまいこんこしてもらわはったんや。」
福井県は敦賀市木ノ芽峠を境に、嶺北地方と嶺南地方にわかれる。嶺南地方は、古くから京や近江との交流が盛んであったことから、嶺南地方の言葉は近江弁や京言葉に近い。
萩やさし敦賀言葉は京に似て 高浜虚子


海照院


若狭彦姫神社


「海は人をつなぐ母の如し」

泊には、「海は人をつなぐ母の如し」と日本語と韓国語で書かれた石碑がある。
— 1900年1月、大韓帝国の商船サインパンゼ号が遭難し、泊の沖合に漂着。これを発見した泊の人々は総出で救護。8日間の介護のあと、商船の乗組員93名全員が無事帰還した。救助にあたった泊集落の当時の人口は100名ほど。乗組員が帰途に着く時にはお互い、親族兄弟のように別れを惜しんだ。—
平和と友好を願って建てられた石碑である。