雲霧仁左衛門 池波正太郎
稀代の大盗賊雲霧仁左衛門を追うのは、安倍式部率いる火付け盗賊改方。鬼平犯科帳で知られる長谷川平蔵が活躍した時代より、五十年ほど前の物語。
長官 安倍式部は、遠く江戸を離れ苦しい探索を続ける部下に、ふところから十両もの金を出し、「これも、ついでに高瀬と政蔵へ送ってやるがよい。それは、わしの金じゃ。遠慮なく小遣いにして、たまさかには気分をはらすように、申しそえてやってくれ。」たまには、酒をのみ、うまいものでも食べ、妓たちとも遊ぶがよいと言うのである。池波正太郎はせりふにその人柄を語らせる。片や雲霧仁左衛門、狙う相手はつねに、汚れた手を隠してぬくぬくと暮らしている大商人。だれ一人傷つけることなく大金を奪い、雲か霧のごとくに去ってゆく。
この二人が率いる組織の虚々実々の知恵くらべ、命懸けの戦い、二重三重のどんでん返しのある展開はスリリングで、本を手から離せなくなってしまった一冊。
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