橋本多佳子句集

橋本多佳子の句集をなんとか手に入れたいと思っていたところ、FBで懇意にしていただいている友人から俳句関係の書を譲り受ける機会があり、その中の一冊に・・・小躍りしました >^_^<

本書は、多佳子の全作品の中かから三百句を掲載。選はご息女で俳人の橋本美代子さん、多佳子が好んだ句を中心に選をしたとあとがきにあります。註も幼き頃より母を知る娘ならではのもので、浅学の身にはとても勉強になりました。

橋本豊次郎と結婚し九州小倉市中原の櫓山に住むことになった多佳子は、高浜虚子の歓迎句会を機に俳句を志します。杉田久女との交流もこのころより始まり、このあたりのところは田辺聖子の「わが愛の杉田久女 花衣ぬぐやまつわる」に詳しいです。

波に乗る陸の青山より高し
ひとの子を濃霧にかえす吾亦紅
みどり子もその母も寝て雁の夜
七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ
つまづきて修二会の闇を手につかむ
蟻地獄孤独地獄のつづきけり
凍蝶のきりきりのぼる虚空かな
恋猫のかへる野の星沼の星
月天へ塔は裳階をかさねゆく
寒月に焚火ひとひらづつのぼる
星空へ店より林檎あふれけり
八方へゆきたし青田の中に立つ
踊りゆく踊りの指のさす方へ
みつみつと雪つもる音わが傘に
秋刀魚競る忘れホースの水走り
一人の遍路容れて遍路の群増えず
死を遁れミルクは甘し炉はぬくし
いくらでもあるよひとりのわらび採り
げんげ畑そこにも三鬼呼べば来る
なんといふ暗さ万燈願みる

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