キリンは森へ 川越歌澄句集

川越歌澄さんの第二句集

キリンを実際に見たのは幼いころの動物園。そう言えば長いこと見ていません。アフリカに住んでいる動物ぐらいのことしか知らなかったのだけれど、「キリンはもともと森に暮らしていた動物で、独特な模様は木漏れ日に紛れるためと聞いたことがある。警戒する相手に対しては正面を向いて直立し、木のふりをする。どこにいてもキリンは森の一部なのだ。」とあとがきを読んで知りました。川越さんのfacebookによく掲載される上野恩賜公園、上野動物園の写真を思い浮かべながら愉しく拝読しました。
読んで気持ちがやわらかくなる御句ばかり。好きな句をいくつか…

風やめばやつぱり独り麦の秋

丸善を巡りぬ父の日の父と

一の山超えて二の山春の雨

猛禽の撫肩にして朝曇

ゐどころを探してきのこ日和かな

立春やキリンのこぼす草光る

夏服や撮るときに目をそらす癖

ゆるゆるとキリンの尿る大暑かな

牛蛙世界はちやんと美しい

ただ水のやうに歩かう月今宵

居待月キリンは森へ帰るのか

キリンは森へ