花衣ぬぐやまつわる

五年をかけた丁寧な取材による杉田久女とその時代。残された名句とともに、優しい眼差しで久女と彼女が生きた時代が語られている。

甕(かめ)たのし葡萄の美酒がわき澄める
足袋つぐやノラともならず教師妻
鶴舞ふや日は金色の雲を得て
谺(こだま)して山ほととぎすほしいまま
露草や飯(いい)噴くまでの門歩き
朝顔や濁り染めたる市の空
夕顔やひらきかかりて襞(ひだ)深く
花衣ぬぐやまつわる紐いろいろ